浴衣ブランド、ルミロックは着物に対するロック。デザイナー芝崎るみさんインタビュー
趣通信スタッフのちあきです。
伝統と確かな技術に裏打ちされた型染めと大胆で斬新なデザインが話題の浴衣ブランド、ルミロック。趣-omomuki-代表のケビンとスタッフのかっくがデザイナーの芝崎るみさんに魅力の秘密を伺いました。
目次
歴史を感じる何かを作りたい。時代劇からルミロックへ
かっく
私はルミロックの大ファンで。毎年最初に着る浴衣はルミロックと決めているんです。
ケビン
僕も初めて買った浴衣がルミロックでした。るみさんはどんなことがきっかけで着物や浴衣のお仕事を始めることになったのでしょうか?
ルミロックデザイナー 芝崎るみ
東京都出身。
テキスタイルデザイン、和装の商品企画、ディレクション、スタイリング。
レディス・メンズのきものやゆかたのデザインを中心に、手ぬぐいや草履など和装小物の企画デザイン・製作を幅広く手がけるほか、歌舞伎座や辻村ジュサブロー館で販売されているグッズのデザイン、ブランドやメーカー浴衣の企画・デザインにも携わる。
小ロットの注染から中ロットの手捺染、デジタルプリント、大ロットのオートスクリーンまで豊富な経験を持つ。
浴衣をはじめ、羽織、長襦袢、振袖などのインクジェットプリントにも対応。
和装のイメージを崩さず、かつ日本人の「着る文化」の面白さを引き出すきもの、マーケットを牽引する新しい感覚の和装デザインを精力的に展開中。
るみ
子供の頃からチャンバラ、雷蔵や勝新が大好きで。時代劇を制作している東映でアルバイトしていたこともあるんです。
家の中には母の時代の銘仙の着物もたくさんあり子供の頃は着て遊んでいました。祖母は養蚕農家で機織りもしていたんです。今はアンティーク着物といわれますが、昔の着物の楽しさは自然に入ってきましたね。
大学卒業後、一度は就職したのですが服のデザイナーになりたくて服飾学校に入学し直しました。卒業した後は代々木にあった着物の図案のデザインスタジオに就職。4年間修行しました。平成元年頃で、まだ手描きでデザインを作成していましたね。スタジオでは小紋や振袖、打掛の図案を描いて新潟十日町や京都など着物の産地のメーカーや問屋さんに図案を売っていました。
働きながら夜の時間を使ってパソコンで図案の作成を始めたのが独立への第一歩。手書きが主流の当時、大変高価だったMacやプリンターを貯金で買って、何ができるか試行錯誤していました。
独立後、だんだんと注文が増え図案を売るだけでなく浴衣の制作まで行うようになりました。その過程でお手伝いしていたメーカーの売り場に出店したり、自主的に作っていた浴衣に屋号をつけることになったんです。
それからたくさんのご縁がつながって、現在のルミロックという形になりました。途中で染色工房に勤めていた金子さんが合流してルミロックを支えてくださっています。
ルミロックストア店長 型彫担当 金子一昭さん
図案にはストーリーが込められている。ルミロックの浴衣で表現されるストーリーとは
かっく
私はルミロックの、伝統的な型染めの技術を使って一風変わった格好良い柄が生み出されているところが大好きなんです。伝統的な図案は縁起への願いが込められていることが多いですが、ルミロックの図案はいかがでしょうか?
るみ
デザインの元となる図案は日本古来の伝説だったり中国から伝わった縁起物だったりするのですが、ルミロックはその幅を広げて海外のトピックや時事問題を表現した図柄も作成しています。着物という伝統の中でも、今をどこかで表現したいのです。
例えばこちらのドラゴンの図案は、ヨーロッパに伝わるセント・ジョージの龍退治伝説をモチーフにしたものです。
竜に囚われたお姫様を助けるという伝説で、ヨーロッパから来たお客さんは「日本の浴衣にセント・ジョージが描かれているなんて!」と、とても喜んでいました。
こちらは吸血鬼ドラキュラのモデルになったプラド公がモチーフ。
これはタロット。占いにはカードに描かれた人間の視線の向きが大事だということで、そのディテールまで注力しました。
世の中の流れや社会の考え方を捉えて、象徴的に表すこともあります。世の中にどんなタイプの人間が増えているだろうかと考えて、その特徴を表すようなキャラクターで表現します。このグリフォンの図案もそのようにして作成したものです。
私の頭の中には、まだ形になっていない様々なモチーフがストックされています。オファーや時事に合わせてそのつど型のデザインに落とし込み実物にしていく。今も様々なストックが頭の中で取り出されるのを待っているんですよ。
一般的な浴衣のメソッドは使わない。ルミロックのこだわり
ケビン
それらの一風変わったモチーフに、さらにオリジナルのひねりが加えられてルミロックの型になっているように感じます。型のデザインにはどんなこだわりがあるのでしょうか?
るみ
着る人が素敵になってモテたり元気になったりしなくてはいけませんから、格好良いデザインであることは必須ですね。着物作りの常識を超えてでも面白さや格好良さをを追及しています。そのため普通なら避けるような難しい手法に挑戦することも度々あります。
例えば浴衣の生地に金魚を描く時。一般的には図柄の端が切れないように金魚を小さく描くことが多いのですが、構図が堅苦しくなりがちです。
ルミロックとしては金魚の伸びやかさを存分に表現した浴衣を作りたいと思い、逆にどうしようもないくらい大きな金魚を書くことにしました。一目見て布幅に収まらないくらい大きいと分かる金魚の図柄であれば、しっぽやひれの端が切れているかどうかなんてもはや気にならないでしょう。舞台衣装みたいな迫力満点の浴衣に仕上がりましたよ。
ルミロックは着物に対するロック。着物に愛と気軽さを
かっく
花や幾何学模様がメインストリームの着物界で、ルミロックのモチーフや大胆な色使い、迫力の表現方法は異彩を放っています。
るみ
私は常に、弱いものや怖いと言われるものの方に立とうと思っているんです。そういう世界は何でもあり。実はエキサイティングで魅力的なコンテンツがたくさんあります。
ずいぶん昔のことになりましたが、ドクロ柄の浴衣を販売していた時。お店の前をお母さんと小さな男の子が通りかかったのですが、そのお母さんは男の子に「見ちゃいけません」と言って小走りに去って行ったことがありましたね。今となっては、ですが。時代は変化していきますね。
明治維新以後の着物業界は、上流社会の上品さを拡大して消費するような仕組みを作ってきました。しかし着物は元来、社会の様々な仕事や階層の人が着ていた服。その中には貴族だけでなく職人や農家もいるし、様々な人が工夫し楽しんで着ていたでしょう。
ロックとは、社会のはみ出し者やダークな部分も愛して受け入れようという寛容さと気軽さが魅力の考え方。
ルミロックは着物に対するロックとして、美しいだけではない部分も表現できるブランドでありたいと思っています。そのほうが着物の世界も面白くなるでしょう?
今は様々な柄の浴衣が着られるようになり、ルミロックのファンだと言ってくださる方もたくさん増えて、浴衣の世界が広がってきたことを嬉しく思います。着物や浴衣が特別な行事のためのものでなく、ファッションとして楽しんでもらえるようになってきたのも良い変化ですね。
るみさんの着物作りの知識と経験に圧倒されつつ、今年の新作を見せていただいたり工房にお邪魔したりと楽しい取材となりました。
ゆかた 2018ルミロック「SAKASAMA TOUR」
そんなルミロックさんの2018年の新作浴衣がいよいよ今週末のKimono Rock東京を皮切りに、名古屋・大阪・仙台と全国で開催されます!
ぜひこの機会にお手に取って味わってみてださいね!
ルミロックオンラインショップ ルミロックストア
ルミロックブランドサイト Rumi Rock
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趣通信編集部スタッフの島田ちあきです。 着物デザイン事務所で働いたことがきっかけで着物好きに。 趣味は海外でアートな写真を撮ること、イラストを描くこと。 着物コーディネートや和グッズの情報はもちろん、普段はなかなか見えない、背景にあるモノづくりの情報も発信していきます♪
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