「デザインしたいものはいくらでもある。アイデアは尽きません」着物デザイナー・木越まりさんインタビュー

[特集・取材]

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最終更新: 2017/05/28

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最終更新: 2017/05/28

 

趣通信スタッフのちあきです。

皆さんが着る着物、誰がどんな想いを込めて作っているのか気になりませんか?

私は着物に興味を持ち始めた当時、最初に知りたいと思ったのが着物の作り方。あれこれ調べていたところ偶然知ったのが、着物デザイナーの木越まりさんが開催する着物のデザイン講座でした。

そのようなきっかけから木越さんのアトリエでお手伝いするようになって1年。今回は木越さんに、どうして着物のデザインを仕事にしようと考えたのか、着物デザイナーとはどんな仕事なのかなどを改めてお聞きしました。皆さんに着物の作り手の生の声と想いをお届けしたいと思います。

 

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着物デザイナー

木越まり

武蔵野美術大学テキスタイルコースを卒業後、アパレルメーカーヨーガンレールにテキスタイルデザイナーとして入社。その後、呉服業界へ転身し、撫松庵(新装大橋)、銀座もとじ、くるりにてデザインを担当。 撫松庵では浴衣、小紋、振袖などの着物だけでなく小物全般のデザインも担当。七五三の着物はパッケージにまでこだわり多彩な色使いで人気となる。 くるりでは多数のオリジナル商品を開発。デザインだけでなく、製造管理、値段設定など一貫した商品開発を行う。

2012年 木越まりデザインを設立。

幅広い素材と技術の知識をベースとした着物デザインが最大の武器。 既成概念にとらわれない自由な感性のデザインが特徴で、幅広いニーズの商品開発に対応。特に、クラシカルな柄を現代の街に合う色彩感覚で表現する事が得意。2016年4月にはオリジナル着物ブランド「加花 KAHANA」を立ち上げる。

 

もともとは洋服のテキスタイルデザイナー。でも子供の頃から着物も好きでした

ちあき
木越さんはどんなきっかけで着物に興味を持ったんですか?

木越
母が着物が好きで。私も子供の頃から行事やお祝いごとのたびに着物を着せてもらって、日本髪を結ってお洒落するのが大好きでした。そういうこともあって布の美しさや面白さに興味を持ち、テキスタイルデザイナーになりました。最初は洋服のテキスタイルデザインをしていたんです。

ちあき
着物業界ではなかったんですね!どうして着物デザイナーに転身されたんですか?

木越
デザイナーとしてもっと広く活動したくて。当時はまだまだ洋服の世界で女性が活躍するのは難しくて、昔から好きだった着物の世界で挑戦しようと思いました。そこで、オリジナル商品を作ったり斬新な着物作りをしたりして注目されていた撫松庵でデザイナーになったんです。撫松庵は高校生の時に着物を買ってもらった思い出深いブランドでした。

個々の商品デザインのみでなく、トータルのブランド作りを学ぶ

ちあき
伝統的な呉服業界では、お客さんからの注文に基づいて、絵師さん、染め屋さん・・・と職人さんが分業で製作し、問屋さんが同じ商品を複数の呉服屋さんに卸売りするのが主流でしたよね。自社でオリジナル商品を作り販売するのは新しい形だったのではないでしょうか。

木越
そう、当時の着物業界では、撫松庵が始めた「ブランド」という概念自体が新しかったんです。ブランドを持つとは、全体のテーマや計画を定め、それらに基づいて個々のもの作りを行うスタイル。従来の着物のような、顧客の注文を元に着物一枚一枚の絵や色を決めたり、テーマがあったとしても個々の商品ごとに設定したりしていた方法とは全く違いました。

そんな撫松庵で、今のお仕事の基礎となる着物のブランド作りを行うことができました。テキスタイルデザインだけでなく、そもそも一年を通しどんなテーマを打ち出していくか、そのためにいつどんな着物を出すか、どんな小物をどの着物と一緒に提案するかなどを企画したんです。

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撫松庵が多くのファンを引きつける理由は、着物と小物、春夏秋冬などトータルで考えることでブランドらしさが強力に伝わること。それを実感し、

これからは着物業界でも、問屋さんからの購入だけでなく、個々のオリジナルブランドや商品が魅力になるはず!

という確信を持ちました。
実際に今では呉服ブランドがたくさん誕生しており、私もこのとき学んだことを元にブランド作りのトータルなサポートを行っています。

 

着物に詳しくなかったからこその視点でヒットを生む

木越
着物業界は未経験だったけれど、詳しく知らないからこそ世の中の多くの人が求める「可愛さ」や「気軽さ」を大切にしながらデザインをすることができました。

例えば七五三セットのヒット。当時は着物というと基本的にはお誂え、オーダーメードの世界だったので、呉服に詳しくない人が七五三の着物や小物をあれこれと揃えるのは一苦労だったんです。それらが簡単に手に入るように着物や小物をセットにし、可愛い箱や分かりやすいパンフレットも作って手に取りやすくしたところ、たくさんの若いお父さんお母さんに手に取ってもらうことができました。

着物に触れるきっかけを気軽に持ってもらい、着物を好きになってほしいという想いをこの時からずっと大切にしています。

可愛くて手に取りやすい、リアルクローズの着物ブランドを届けたい。オリジナルブランド「加花(かはな)」

ちあき
そんな着る人への想いが詰まったのが、木越さんのオリジナルブランド「加花(かはな)」なんですね。

木越
私の思う「可愛さ」を表現したいと長年考えていて、それがついに形になったのがこのブランドです。私も大学生の娘も「可愛い!」と思う、幅広い年齢の方に好まれる大人可愛さがテーマ。手描きの線の揺れや強弱と明るい色使いで、柔らかさやナチュラルさを表現しています。現代の町並みに似合う軽やかな着物をデザインしました。

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手描きのデザインが可愛い加花の着物

取り扱いが簡単であることも特徴。こんなに暑いのに(※インタビュー当日は5月にも関わらず東京は30度近い暑さ)お家で洗えないと大変でしょ?

私は海外に行くのが大好きだから、飛行機で何時間着てもアイロンですぐにシワが取れて、日中汚したり汗をかいたりしてもホテルで洗って次の日には着られる着物が欲しかったんです。加花ではほとんどの着物を洗える素材で作ることにしました。

私が目指すのはリアルクローズとしての着物。伝統的な和をテーマとしつつも現代の感覚で可愛いと感じ、お手入れも簡単で、お値段もお手頃なもの。着物に興味があるけれど難しそうだなあと思っている人に導入として楽しく着てもらいたいんです。

ちあき
ちなみに、ブランド名は娘さんのお名前からなんですよね。

木越
そうなんです、“かはな”っていうんです!仕事でブランド名がしょっちゅう出てくるから彼女は恥ずかしがるんだけど(笑)。

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娘さんの可花さんと。お二人が着ているお着物はもちろん「加花」

デザインしたいものはいくらでもある。アイデアは尽きません

木越
私、まだまだ作りたいものがあるんです。街にいてもあれこれデザインのネタを探してしまうし、海外に行ってもその国の素敵な布を探してしまう。

メーカーさんとお話ししていてもどんどんアイデアが出てきて、依頼もないのに提案したり(笑)。メーカーさんには「木越さん、前例がないから難しいですよ」って言われてしまうんだけど、私は実現させたくて「やってみましょうよ〜!」って後押ししちゃうんです。そしたら大抵できちゃいます。デザインが実現するのも嬉しいし、メーカーさんが「やってみたらできました!」って嬉しそうにしてるのが私も嬉しいし。

本当に作りたくてたまらない。最近は着物だけでなく雑貨などのデザインも提案しています。

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着物だけでなく雑貨やインテリアも。和の素敵な世界観を楽しんでほしい

ちあき
着物以外のデザインといえば、今はバッグもデザイン中なんですよね。

木越
着物はもちろんのこと、今後は雑貨やインテリアなども通して和の世界に触れる人を増やしたいんです。バッグやマグカップ、アクセサリー、ベッドカバーなど、雑貨やインテリアは生活に取り入れやすいですよね。日本の人でも、海外の人でもより気軽に和を楽しめると思います。目指すは日本のマリメッコ!

マリメッコ:独創的なプリントと色づかいによって世界的に広く知られるデザインハウス。1951年にフィンランドで誕生し、創造性と機能性を融和させたライフスタイルブランドとして、クロージング、バッグ・アクセサリー、ホームデコレーションといった分野で独自のデザインを発信しています。http://www.marimekko.jp/

ちあき
海外展開も視野に入れられてるんですね。

木越
こんなに素敵な和の世界。日本でも、海外でももっと多くの人に知ってもらいたい、生活に取り入れてもらいたいと思っています。これからも可愛いデザインと手に取りやすさを大切にして、加花と和の世界を育てていきたいです!

 

 

 

着物をはじめとした和の世界をもっと世の中に広めていきたいという情熱と、尽きないアイデアを実現する楽しさを語ってくださった木越さん。
明るくて率直な木越さんのインタビューは終始笑いにつつまれていました。
木越さん、ありがとうございました!

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インタビュー終了後、木越まりさんと。

 

銀座三越にて「加花」の期間限定ショップがオープン

これまでECサイト限定販売を行ってきた「加花」が今夏、銀座三越の「銀座浴衣ガーデン」内のブースに期間限定ショップとしてオープンします。

先日開催されていた東京キモノショーでも加花のコーディネートが展示されていましたが、今回は実物を手にとることができますよ。

実際のご試着は勿論、趣通信スタッフでも東京キモノショーでご紹介たデジタルサイネージによる新時代の『デジタルフィッティング(試着)』も体験していただけます(詳しくはこちら:簡単に色んな着物や振袖・黒留袖などが試着できる!?東京キモノショーでバーチャル着物フィッティングを体験!)。

 

ぜひこの機会に加花の着物をチェックしてみてくださいね♪

 

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会期:6月7日(水)〜13日(火)
場所:三越銀座店 9階 銀座テラスコート「銀座浴衣ガーデン」内

加花-KAHANA 公式サイト:http://kahana-kimono.com/

木越まり公式サイト:http://marikigoshi.com/

 

 

 

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この記事を書いた人
ちあき
ちあき

趣通信編集部スタッフの島田ちあきです。 着物デザイン事務所で働いたことがきっかけで着物好きに。 趣味は海外でアートな写真を撮ること、イラストを描くこと。 着物コーディネートや和グッズの情報はもちろん、普段はなかなか見えない、背景にあるモノづくりの情報も発信していきます♪

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