大切な着物のお手入れ・クリーニング方法③ 汗染みに対する応急処置と一番の着物の保管方法
趣通信スタッフのしーまんです。
これまで2 回にわたって染色補正職人の小林一通さんに着物の保管やクリーニングについてお話をしてきましたが、最後は着物を着ているうちに暑くて汗をかいてしまう、そんなときの対処法についてご紹介させていただきます。着終わった後に汗を飛ばして、できるだけシミができないように工夫をしましょう!
また、最後に一番着物に良い保管方法について書かせていただきました。
目次
実践!厄介なシミ・汗染みを解消する方法
あらゆるシミの中でも、やっかいな血・尿・汗など体内からでる液によるシミだそうです。
少し暖かい日は特に、脇や帯枕の部分に汗をかいてしまいますよね?
大量に汗をかいてしまったらすぐに染み抜きに出してほしいですが、多少の汗(または応急処置として)なら以下の方法で解消しましょう!ただし、絞りやお召しなど、縮みやすい生地の着物にはおすすめしませんのでご注意ください。
シミ・汗染みを解消するために用意するもの
・霧吹き(できるだけ細かいミストが出るもの)
・きれいな水(水道水を沸騰させたもので OK)
・乾いたタオル(新品ではなく、使い古したきれいなタオルを使用してください)
手順 ① :きれいな水を入れた霧吹きで、汗をかいた部分(裏地)に吹きかける
100 円ショップで売っている化粧品用の“ミストタイプ”の霧吹きなどがおすすめです。
写真は、袖と身頃が縫い合わさったところ(脇)です。軽く霧吹きを掛けると水を吸うところと吸わないところができます。吸わないところは汗が染みていて入り込まないのです。
手順②:乾いたタオルでふき取る。
汗が浮き出た個所には水をたっぷりめにかけて、タオルでふき取ってください。
必ず、新品のタオルではなく使い古したタオルやさらしなどで行いましょう!新品の布には余計な糊が付着していることがありますし、水分を吸いません。
その際には、出来るだけ胴裏を浮かせて作業をするようにして下さい。もし、汗が表生地まで到達している場合は、何もしないでプロの所に持って行きましょう。
手順③: 着物を着た後にはハンガーにかけて最低 1 日は干して汗を飛ばす。
ただ、この方法はふき取ってもこれで汗を完全に吸い取っているわけではなく、“散らし”ているだけなので、シーズンが変わる時には一度洗いに出されることをお勧めします。
防水加工の特徴を理解して着物を大切に着ましょう
ここ数年で防水加工をかけることが定番になってきました。一度掛けると数年の間丸洗いが無料などの特典が付いてくるお店もあり、とても魅力的ですね!
とにかく汚れを作らないためにと防水加工をするのですが、防水加工の特徴を理解することで、より着物を大切に保管できますよ。
防水加工のメリットとデメリット
防水加工をすると、強力ものであればバケツたっぷりの水を横からかけても水をはじきます。
ただ、人の体温でだんだんと染みてくる汗などには対応していません。
また、一度防水加工をしてしまうと、いざシミがついてしまったときには、防水加工を取ってから染み抜きをするので、かえって染み抜きの加工代が高くなることがあります。
その着物を今後どう楽しんでいきたいか考えましょう
着物というものは本来、色を染め替えることによって年を重ねても着れるようにしたり、
次の世代に受け継いでいく楽しみがあります。
防水加工をしてしまった着物の染め替えは、細かい粒子が生地に入り込んでいるため、色が入りずらく、思うような色にならなかったり、無理な作業で生地が傷んだりということが想定されます。
自分だけで着潰す着物や、染め替えをしなくても楽しめそうな着物であれば防水加工をしてかまわないと思いますが、そうでなければ一度この着物を将来どう着ていきたいのかを考えてみましょう。
一番の着物の保管方法は“着物を着る”こと!
いかがでしたか?普段わたしは着物を販売される方や、染色や織りの職人さんと触れ合う機会はありますが、着物を直す職人さんに触れる機会はなかなかないもので、貴重なお話しを聞くことができました。
着物の保管について、「やはり手間やお金がかかるなあ」と思われた方も多いかもしれません。ですが、お金をかけずに楽しく、
一番着物に良い保管方法は、“着物を着る”ということ。
着物をたんすにしまったままにしないでたくさん着て、風通しよくしましょう。そしてきものの状態をご自身で把握しましょう!それが一番の保管方法です。
第1回:大切な着物のお手入れ・クリーニング方法① ”着物の医者” と呼ばれる染色補正職人のお仕事を知っていますか?
第2回:大切な着物のお手入れ・クリーニング方法② シミの正体・たとう紙での保管方法
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