着付けの技術がいらないように仕立てるのが仕立て屋の目指すところ〜和裁士・佐武美智子先生をご紹介

[和文化・コラム]

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最終更新: 2017/08/18

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最終更新: 2017/08/18

 

こんにちは!趣通信スタッフのしーまんです。

皆さんはマイサイズの着物を仕立てたことがありますか?最近では、仕立て上がりの着物や、リサイクルの着物屋さんもたくさんあったりで、自分サイズの着物をオーダーする方も少ないのではないでしょうか?

着物を仕立てたことがある方も、大抵の方が呉服屋さんに採寸してもらって仕立て屋さんに回るので、和裁士の方と直接お話する機会は少ないと思います。

本日ご紹介するのは、原宿キャットストリートにひっそりと和裁スクールを営む東京の和裁教室プロきものスクールの佐武美智子先生です。文章だけでは伝わらない周りの方を明るくする人柄と、従来の和裁や職人の考え方に因われない柔軟な方です。和裁を知ると、着物がきっともっと楽しくなりますよ♪

 

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佐武さんが和裁を始めたきっかけは?

はじめは自分で縫えたら仕立て代がタダになるかもという考えでした

佐武さんが今経営している和裁スクールは、もともと松井扶江プロきものスクールという名前で、そこの生徒さんとして今から約12年前に通い始めました。

「和裁を始めたきっかけは、自分で縫えたら仕立て代がタダになるかなと思ったから。でもお稽古代の方が高かったです(笑)」

と、冗談交じりに当時を振り返っていらっしゃいました。

 

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ずっと続けていける仕事は魅力。人が集まるお教室を開きたい

今のスクールに通いはじめる前に、86歳で一人で和裁教室を開いている先生に出会いました。

「定期的にお教室を開いていたら、いつも誰が来るからちゃんとしていられるかなと。もともと、とてもだらしない人間なので、人に会わないとずっと寝間着でいちゃうんです」

と、佐武さん。年齢を重ねてもずっと続けていける仕事、そして生徒さんが通うお教室というコミュニティも作れるという点も佐武さんには魅力だったようです。

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オーダーメイドの仕立てをしたい。着付けの技術が不要になる仕立て技術

難しさを感じる着物は、仕立て方で解消できるかも

「着付けの手順では、まず上前の幅を合わせてから着付けをしますよね。でもあの所作そのものが前幅があっていないということなんです。本当のオーダーメイドは背中心が合えばすべて合うように仕立てられるんですよ」

と佐武さん。和裁士は実際にオーダーをする方とお話が出来れば、その人の好みや悩みに応えてカスタマイズできると言います。

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「浴衣の仕立ては、着物と同じ仕立てになっているものがほとんどです。着物は襦袢を下に着ることを前提にしているので衿は少し広がりますよね。一方浴衣を着るときには、ほとんどの方が襦袢を下に着ることはないので、時間が立つと衿が開いてきてしまうんです。悩んでいる人もいるかと思いますが、衿が元の位置に戻ろうとしているということで、当然のことなんですよね。だから浴衣のオーダーを受けたときには、下に襦袢を着るか着ないかを聞いた上で、仕立て方を変えるようにしています」

 

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いろいろな着付けの悩みを耳にしますが、多少お金がかかっても、仕立ての一工夫で解消できるのですね。

 

職人と書いて“オタク”と読む。佐武さんの職人観とは?

今の仕事をしていて面白いことは?

「遊びと仕事がごちゃまぜになっているところですね。やっと縫い終わって納品を完了しても、また自分のものを縫う。休みの日も自分のものを縫ってます。仕事も趣味も和裁なので、一生時間を持て余すことはないと思います」

と、楽しそうに今縫っているという自分の着物を見せてくださいました。

 

ジャパンクオリティーはオタクの精神なんじゃないかな

「職人って、頼まれもしないのに、自分のこだわりを持ち込んでしまうんですよね。ビジネスを考えたら頼まれた仕事だけをしていればいいんでしょうけど、出来上がったときにそういう仕事って気持ちが良くなくて。そんな風に時間度外視でやっていたら作り込みすぎているんですよね。きっとお客様にはわからないようなこだわり何でしょうけど。でもそれがジャパンクオリティーってもので、日本人の気質なんじゃないかなと思います」

 

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趣味が転じて、幅広く様々な生地を縫えるようになりました

佐武さんは郷ひろみさんの大ファンで、一部ファンの間では有名なステージ衣装のコスプレイヤー。郷ひろみさんが来ていた衣装と似た生地を用意して、それを自分で着物にアレンジして仕立てます。そんなことをしているうちに色々な生地を縫えるようになったと言います。

「この間はレース生地4枚持ち込まれて、それを重ねて打ち掛けにしてほしいというオーダーを受けました。」

もともとスクールとして時代衣装コースというものを手がけていましたが、噂が噂を呼んで、舞台やテレビドラマなど、特殊な仕立ての仕事がやってくるそうです。趣味を強みに変えていく探究心は何をする上でも大切なことなんですね。

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作っている衣装の一部。似たような柄を作るために生地を染めて、グリッターすらも手作り。使っているものは、一般的な手芸屋さんなどで手に入るものを使っているようです。

 

ちょこっと通うだけでもOK!プロきものスクール

実はわたしも大学生の時、授業が終わったあとにこのスクールに通っていた時期があります。職人の世界は「見て盗め」の文化なのだと思っていましたが、仕事として実際のお客様の着物を縫いながら、きちんと指導をしてくれます。うまくいかないときも、その理由を教えてくれ、自分の力で縫い上げます。裄直しだけできるようになりたいなど、ちょっと和裁の知識がほしい方でも本格的に和裁士を目指したい方でも、イチから丁寧に教えてくれますよ。

 

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■住所:
〒150-0001
東京都渋谷区神宮前6-18-2 グランドマンション原宿401号室
(アクセス) 渋谷駅13番出口より徒歩5分、明治神宮前駅7番出口より徒歩5分。
■電話番号:03-5485-1088
■E-mail:info@pro-kimonoschool.com

佐武美智子さんプロフィール

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大学卒業後医薬品メーカー勤務。
その後退職し、プロの和裁師を目指し松井扶江プロきものスクールに入学。
公益社団法人色彩検定協会A.F.T. 服飾教育者学部服飾教員1級。

しーまん取材後記

久しぶりに訪れたお教室は、当時と変わらず、休憩中はとても和気あいあいとした雰囲気で、授業が始まると皆さん一気に真剣な表情になります。ミシンすら触れることの少なくなった今日このごろではありますが、少しでも和裁に触れていただけたらと思います。

※「和裁士」という言葉は日本和裁士会所属の認定資格であり、佐武先生は和裁士会には所属していませんが、「和裁士」という言葉が一般的になっているため、今回の記事の中ではこちらを採用させていただいております。

 

>佐武美智子先生に教わった、不器用さんでもできる!かんたん兵児帯の作り方の記事はこちら

 

 

 

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