着物に込められた意外なメッセージとは?重宗玉緒デザイナー玉緒さんインタビュー

[特集・取材]

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最終更新: 2018/05/17

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最終更新: 2018/05/17

 

趣通信スタッフのちあきです。

ポップで鮮やかな色遣いの可愛い着物もあれば、一転、ドクロや心臓などドキッとさせるモチーフの小物も展開する着物ブランド、重宗玉緒。どんなメッセージや世界観が込められているのでしょうか。

スタッフのかっくが重宗玉緒デザイナー、玉緒さんにインタビューしました。

重宗玉緒さん

重宗玉緒
着物、オブジェアーティスト。山口県出身、東京在住。多摩美術大学テキスタイルデザイン専攻修了。
大学在学中に大正〜昭和初期のビンテージ着物に魅せられ、自分で着物を着始めると同時に着物や浴衣の制作を開始。
在学中は染コースを専攻し、友禅染・型染・スクリーンプリント・臈纈染・絞り染等の様々な染色技法を経験する。

大学卒業後は友禅染での制作をメインに着物・オブジェ等の制作活動を開始。
近年は、より緻密な表現が可能なインクジェットプリントでの染色を取り入れ、手描きの下絵を元にデジタルに転化した着物や帯の制作や、職人さんと協力し ながらの物作り、企業から依頼された着物の企画・デザインも行っている。

 

「KIMONO姫」が自分でも作ってみようと思うきっかけに

かっく
今日は重宗玉緒の名古屋帯を締めてきました!インパクトがあってお気に入りです。

重宗玉緒はビビッドカラーや十字架モチーフなど、着物らしからぬ独特のテイストが人気です。
ポートフォリオサイトも一見すると着物のサイトだとは分からないですよね。

重宗玉緒

玉緒
そうですね、着物ありきではなく、まずはアーティストとして表現したい世界観があり、着物や帯の形に手段として落とし込んでいるからだと思います。着物はアウトプット方法のひとつなんです。

かっく
着物が目的ではないんですね。そんな玉緒さんが着物の制作を始めたきっかけを教えてください。

玉緒
美大生だったころ、雑誌「KIMONO姫」を知ったことがきっかけです。KIMONO姫のデコラティブで妖しい魅力に惹かれずっと写真集を見ていました。
同じくデコラティブなアンティーク着物にも強い興味を持ったのですが、良いものは高価でなかなか手が届きません。そこで自分で作ってみようと思ったんです。 美大生はまず「どうやったら自分で作れるかな」と考えるので。

重宗玉緒

当時はテキスタイルデザイン科に通っていました。染色など習っていたのですが、失敗するとやり直しがきかないのであまり好きではなかったんです。でも着物が好きになったことがきっかけで大学の勉強への姿勢も大きく変わりましたね。

卒業後はアルバイトをしながら自主制作を進めていました。発表の場を持つことを心がけ少しずつ活動の場を広げていったことでご縁が広がり、ブランドの確立に向けて様々なチャンスを得ることができました。

重宗玉緒で表現する世界観”メメント・モリ”とは

玉緒
美大生だった頃からずっと惹かれ続けているテーマがあって。それに沿った作品群をブランドとして整えてきました。
そのテーマは”メメント・モリ“。

重宗玉緒

もとはラテン語で「死が自分の先にあることを忘れるな」という意味。のちに現世の富や名声は空虚なものだというキリスト教の思想を表現する言葉になりました。
生と死というテーマは生ける全てに普遍的なもの。しかし同時に人によって感じ方が全く違っているので個人的でもあります。そこに面白さを感じました。重宗玉緒のデザインは、それらメメント・モリを表現した各国のアートに大きく影響を受けています。

重宗玉緒
重宗玉緒の着物は、玉緒さん自身が一から原寸大で下絵を手描きし、データに起こして彩色して作られている。

ヨーロッパのアートと重宗玉緒

かっく
それぞれのアートからはどんな影響を受けたのでしょうか?

玉緒
まずヨーロッパ系のアートから、モチーフに意味を持たせる手法を取り入れました。メメント・モリに限らずヨーロッパの宗教画では百合やりんご、白い鳩など描かれたモチーフに様々な意味が隠されています。重宗玉緒の着物にもそれらのモチーフを描いています。

重宗玉緒

着物ならではの工夫をすることもあります。
着物は着た時に隠れる部分が多い衣服なので、あえて見えない部分に色々なモチーフを盛り込んで制作したり見える部分と隠れる部分を使って生と死の対比を表現したり。

重宗玉緒を着てくださる方がそれを発見してくださったときは、メッセージが通じたようで嬉しいですね。

メキシコのアートと重宗玉緒

玉緒
次に南米のメメント・モリ。メメント・モリの思想はキリスト教とともに南米にも伝わるのですが、ヨーロッパのダークな表現とは違い、陽気でビビッドな世界観で表されます。

メメント・モリをテーマに制作を始めた在学中はヨーロッパ系のアートをモチーフにしていましたが、実際にメキシコを訪れたことがきっかけで南米独特の宗教観やテイストも取り入れるようになりました。

重宗玉緒

例えば「死者の日」という現地のお祭り。日本でいうとお盆なのですが、このお祭りでは生と死の象徴としてドクロが扱われています。お祭りの装飾はとてもカラフルで、街に飾られた絵画ではガイコツが着飾ってダンスするなど死の世界が楽しそうに描かれています。
このように生と死を丸ごと包み込むような南米メメント・モリのエネルギーに魅了され、鮮やかな色遣いやポップなテイストを着物に取り入れています。

重宗玉緒の着物で伝えたい、エネルギー溢れるメメント・モリ

玉緒
最初はメメント・モリというテーマをどちらかというとネガティブなテーマと捉えて表現活動をしていました。しかし南米での経験があり、死の前にはエネルギーに溢れた生があるというポジティブな捉え方に変化してきたんです。

現在はメメント・モリというテーマを、明るいエネルギーを感じる世界として着物に込めています。パッと目を惹く、元気になれる色を使っています。

重宗玉緒

メメント・モリというテーマと着物の組み合わせには驚かれることも多いのですが、生と死は常に隣り合わせ。「死を想像せよ」というメッセージを持つ衣服を日常に着ることも、同じメッセージを生のエネルギーと捉えて明るくビビッドに表現することも、自然なことだと思うんです。

 

 

 

 

感性豊かなアーティストである玉緒さん。
ポップな作品群には深淵でエネルギッシュなテーマが隠されていました。

重宗玉緒

そんな玉緒さんの新作アイテムを楽しめる合同展示会が開催されます。

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Fashion Expo vente à Tokyo Printemps 2018

5月18日(金)14:00~20:00/19日(土)11:00~19:00/20日(日)11:00~17:00

恵比寿 HALO
〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿1-23-21 ヤマトハイツ1F spase03
(JR恵比寿駅 東口より徒歩6分)

出展:Zaaka Vincent・蕾写真館・重宗玉緒

出展は、『身につけるアート』をコンセプトにパリと東京を拠点とするアクセサリーブランド『Zaaka Vincent』、そしてアンティーク着物を中心としたスタイリングと特別なヘアメイクで撮影する写真館『蕾写真館』。

2016年 パリ10区のエスパスジャポン、2017年3月に東京青山で合同展示会を行ったメンバーで、合同展示会を開催します。

Fashion Expo vente à Tokyo Printemps 2018

皆さんもこの機会に、重宗玉緒の着物に込められたメッセージを読み解いてみてくださいね。

重宗玉緒オンラインショップ

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この記事を書いた人
ちあき
ちあき

趣通信編集部スタッフの島田ちあきです。 着物デザイン事務所で働いたことがきっかけで着物好きに。 趣味は海外でアートな写真を撮ること、イラストを描くこと。 着物コーディネートや和グッズの情報はもちろん、普段はなかなか見えない、背景にあるモノづくりの情報も発信していきます♪

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