趣通信スタッフのしーまんです。
大切な誰かから譲り受けた着物を広げてみると、なんだか茶色いシミや白くカビができていたり、黄色っぽく変色してしまっている…。着物を着る人なら誰しも経験があるのでは?
呉服屋さんにもっていってみても、落ちない、または落ちても生地が傷むからと断られることもしばしば。わたしはそういう着物があると、とりあえずたんすに入れて保管しておくか、仕方ないものとして処分していました。
ですが、こういった仕方なくあきらめてきた着物を増やさないために、大切な着物をきれいに保管するにはどうしたらいいのでしょうか。今回は3回の記事に分けて、着物の保管・クリーニングについて高田馬場に工房を構える、染色補正『彩徳』の職人・小林一通さんにお話を伺いました。
『染色補正 彩徳』http://saitoku.tokyo/
目次
着物の医者”染色補正とは?
着物の汚れを落としたいときに「染み抜き」という言葉をよく耳にすると思います。染み抜きは染色補正の代表的な仕事の一つではありますが、その作業内容は多岐にわたります。
染色補正の仕事
・地直し…古いシミや、黄変、色むらなどを色を抜いたりはがしたりして直すこと。
・染み抜き…汗や泥はね、食べ物などによる汚れを落とすこと。
・生き洗い…丸洗いとも言いますが、石油溶剤を使ってする着物の洗濯(目立つ汚れは染み抜き)。
・洗い張り…着物を一度解いて、洗剤にて水洗いをし、その後糊入れをする。
・染め替え…着物を別の色や小紋柄を染め替えること。
・はき合せ…色焼け・染めなどで起こった色の違いを直すこと。
・家紋…紋入れ・紋替え
・箔・刺繍直し…ハゲた箔やほつれた刺繍を元に戻す。
・柄直し…柄を足したり、部分的な色変更など。
・防水加工…水をはじく加工を施す。
など
なんとなく聞いたことがある用語がちらほらありませんか?
以下でいくつか仕事事例を見ていきます!
着物はどれだけきれいにできるの?染色補正の仕事例
染色補正職人の仕事例①:地直し
こちらは、実際に染色補正の技能試験で出された地直しの課題です。左写真のような赤線を消して右のような状態にする課題なのですが、線が引かれていた箇所の鹿の子模様は同じ色を作って再現し、赤の染料が残ることなく白を出すという技術はとても難儀なものだそうです。
染色補正の職人の技術は着て汚してしまった着物をきれいにするだけではなく、お店に並ぶ前の商品ので、加工途中に染料垂らしてしまって汚してしまったものを新品同様に修復こともあります。実際に店頭にきれいな商品が並んでいるのは、こういった職人の技術あってこそなのですね。
染色補正職人の仕事例②:染み抜き
着物を着る方が一番染色補正職人のお世話になるのは、やはり染み抜きではないでしょうか。写真はコーヒーのシミ抜きの例ですが、ただコーヒーの汚れを落とすだけでなく、その後に色を入れ直すこともあります。
染色補正職人の仕事例③染め替え
染め替えのイメージは、薄い色を濃くするのかなと思っていましたが、濃い色も一度色を抜いて好みの色に色掛けをすることができます。年齢を重ねていくとどんどん派手な着物を着るのに気が引けてしまいますが、こうしてお気に入りの柄も年齢に合わせて着ることができそうですね。
染色補正職人の仕事例④:はき合せ
虫干しなどで着物を衣紋掛けにかけて置いたら、色焼けしてしまった。そんな焼けも、元の色で復元することが可能です。着物の色は、物により微妙に色合いが異なりますので、既存の染料で染めるという訳にはいきません。こうして同じ色を作り出すことも職人さんの腕が試されるところです。
絹は生き物と教えられたことがありますが、着物を長く生かすためには、何百・何千とある着物の種類や、それを作る工程に至るまで、あらゆる知識が必要なのですね。
染色補正職人のお仕事が、人でいうところの“医者”というのがお分かりいただけたかと思います。
(もっといろいろと事例を見てみたい方は、ホームページで見てみてくださいね)
諦めていた着物、相談しましょう!
染み抜きをしてくれるお店などはたくさんあると思いますが、その必要な知識は膨大で、上に書いたのすべての工程を行えるお店は数えるほどしかないでしょう。実際の医者でも内科医、外科医さらに細かく分かれているように、染色補正のお店も得意とする技術に偏りがあるのが現状だそうです。なので、一度断られてもセカンドオピニオンを求めてもよいかもしれませんね。
とはいっても、染色補正の職人さんってどこにいるの?どうやって探すの?というときには、以下のようなサイトを参考にしてみてください!
『東京都染色補正しみぬき組合』 http://hoseikumiai.jp/
染色補正の工房の一覧を見ることができます。伺う際には一度お電話で相談してみるとよいと思います。
今回お話しを聞いてきた、高田馬場にある彩徳の代表・小林一通さんの行う染色補正は、「生地にやさしく、素材の特性を損なわないように仕事をすること」をこだわりとしています。できる限り薬品を使わず、職人の技術で落とすことで、その着物が何年先になっても健康でいられる状態を目指しているとお話してくださいました。
次回の記事では、着物の保管に関する注意やきれいに保つ方法をお伝えしたいと思います!
※6/24更新
第1回:大切な着物のお手入れ・クリーニング方法① ”着物の医者” と呼ばれる染色補正職人のお仕事を知っていますか?
第2回:大切な着物のお手入れ・クリーニング方法② シミの正体・たとう紙での保管方法
第3回:大切な着物のお手入れ・クリーニング方法③ 汗染みに対する応急処置と一番の着物の保管方法
※本記事で使用しております画像は一部、染色補正 彩徳様よりご許可いただき掲載をしております。
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