大切な着物のお手入れ・クリーニング方法② シミの正体・たとう紙での保管方法

趣通信スタッフのしーまんです。

前回に引き続き高田馬場に工房を構える、染色補正職人・彩徳の小林一通さんに聞いた、 着物の保管について書きたいと思います。

着物についた汚れを“シミ”と呼ぶことが多いですが、その汚れの原因は多種多様です。
なので、今回書かせていただく内容は、実際に小林さんが請け負ったお仕事をもとにお話しをもとに書かせていただきますが、一概にすべての着物に当てはめることはできないの で、あくまでも参考にしてくださいね。

『染色補正 彩徳』http://saitoku.tokyo/

 

着物の「シミ」とは何か?

大きく分けてシミには 2 種類あります。それは、

① 着ている過程でついた汚れ…食べこぼしや、ワイン、血液、泥はね、ファンデーションによる衿汚れなど。

② “いつの間にか”できていた汚れ…何年かしてから浮き出てくる汗じみや、保管する中で浮き出てきたもの。

※夏帯など、汗のかきやすい時期の着物は要注意です。

①の着ている過程でついた汚れの場合は、気づいたらすぐに染み抜きに出すことをおすすめしますが、②の場合はいざ着ようと思って、タンスから出すまで気が付きませんよね。私の場合、母からもらったずっと着ていなかった着物などはとくにこのケースが多かったような気がします。

②の“いつの間にか”できていた汚れ正体をさらに見ていきましょう!

 

”いつの間にか汚れ”の正体

着物や帯の製作工程・加工途中にできるシミ

「このシミ、いつの間にできたの?」―背中や脇の汗はまだしも、こんなのところに?
というシミ、ありませんか?着物や帯に斑点のように茶色いシミができていたり、同じタンスに入れていても、他の着物は大丈夫なのにこの一枚だけ訳の分からないシミが出ているなど。

写真は実際に、ちょうど衽(おくみ)の折り線の個所で線状にシミができてたもの。シ ョックです。

こういったシミは、その着物の製作工程での水洗いの悪さなど、生地に付着した糊の影響で、地色変色やカビの出やすい状況になっていることが考えられます。

着物の製作工程では、織り糸や帯芯に使われている糊や、過去に丸洗いに出したときに使われていた溶剤(洗剤)のわずかな残りの影響で変色が起こってしまうこともあります。

近頃では、頑固な汚れも落とせる薬剤がたくさんあるようですが、強力である反面、薬剤そのものが生地に残り、数年経つと化学変化をもたらし、シミ・変色などといったかたちで浮き上がってきてしまうことも少なくない ようです。

こういったシミへの対処法は、できてからでは自分では対処のしようがありません。できてしまったら、染み抜きで落ちるのか、落ちなければ色を変えてしまう(色掛け)など方法があるので、悉皆屋さんに持っていき、相談しましょう。

 

もしかしたら、たとう紙が影響しているかもしれないシミ

たとう紙・保存に使う紙箱・段ボール・ボール紙なども、紙製作における工程で漂白剤・接着剤に含まれる防腐剤なども、着物の変色につながることがあるそうです(本物の和紙 を除く)。
小林さんが今まで扱ってきた染み抜きの中には、たとう紙に描かれている絵がそのまま着物に移ってしまったものもあったといいます。何十年も同じたとう紙に入れっぱなしに なっているものありませんか?すぐに交換することをおすすめします。

※カビなのか何なのか、気が付いた時には、点々とよくわからないシミに覆われた帯。

 

たとう紙の選び方

大切なきものはだいたいたとう紙に入れて保管していますよね?できるだけ着物に優しい和紙を選びましょう。

①和紙でできていること
※和紙とは、和紙まがいではなく本物の楮(こうぞ)でできているもの

②柄があまり入っていないシンプルなもの

③ボール紙や着物を挟んでいる紙は必ず取って保管
※どうしても使いたいときには和紙、または糊が良く抜けている布

以上の 3 つを守ってたとう紙を選ぶとよいでしょう。ただ、上記はあくまでも大切な着物 を長期間保管するときに気を付けていただきたいことですので、よく着る着物はそのままたんすに入れて保管するか、なるべくシンプルなたとう紙を使うことで対応すれば大丈夫 です。

また、完全な和紙でできているたとう紙は高価でなかなか手に入りませんので、手作りすることもできます。

 

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