趣通信スタッフの紅子です。着物の種類には大きく分けて「染めの着物」と「織りの着物」があります。
今回は、染めの着物の種類についてご紹介していきたいと思います。
目次
染めの着物とは
「染めの着物」とは、はじめに白生地を織り、そのあとから色や柄を染め付けた着物のこと。「後染め(あとぞめ)の着物」と呼ぶこともあります。
それに対して「織りの着物」は先染め。まず糸を染めて、織ることによって柄を出していくものです。
着物は原則として、織りの着物より染の着物の方が格が高いという扱いになります。
(参考:結婚式に出席する際(親族・友人)の着物選び・結婚式着物マナーをご紹介)
なので、振袖や黒留袖などは必ず染めの着物ですし、紬地の訪問着はあくまでのオシャレ着で、染めの方が格が高くフォーマルな着物です。
それではここから、染めの着物を技法によって3つに分類しながらご紹介していきましょう。
染めの着物 種類①手描き染め
まず一つ目は、手描き染め。
白生地に、花鳥風月や吉祥模様などを絵画的に表現することが可能です。
手描き友禅
友禅染めは、江戸時代に京都の扇絵師、宮崎友禅斎(みやざきゆうぜんさい)が考案したとされています。手描き染め、と聞いてまっ先に思いつくのがこれではないでしょうか。
友禅染では、まず、もち米と糠(ぬか)と塩を混ぜた「糸目糊(いとめのり)」というものを模様の輪郭線に置いていき、そのあと、色を挿していきます。糸目糊がいわば堤防のような役割を果たし、隣り合う色が混ざらないようにしてくれるのです。最後に糊を落として完成です。
友禅染めには京友禅、加賀友禅、江戸友禅などがあります。基本的な技法は共通していますが、柔らかい色調を好む京友禅、自然描写を重んじ深みのある色を用いる加賀友禅、渋く落ち着いた色合いを好みスッキリとした江戸友禅など、それぞれの地域の好みを反映しながら発展してきました。
ろうけつ染め
(きものサローネ2016:ち江す様より)
染めたくないところをガードする(防染する)、という意味では友禅染めに近い技法ですが、糊ではなく、ロウを用います。
ロウは糊より防染力が弱いため、自然な滲みが生じたり、ひび割れたような模様が浮かび上がるのが特徴です。
その歴史は友禅染めより古く、友禅染めの出現によって衰退した時期もありましたが、現在はその素朴な風合いが見直されています。
ぼかし染め
伸子針(しんしばり)という、竹ひごの両端に針がついた道具を使って生地をピンと張り、刷毛などを使って、濃いところから淡く暈して染めていきます。
色の組み合わせの妙が楽しめるほか、単色のぼかし染めなら色無地と同じ扱いになり、お茶席などでも着ることができます。
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染めの着物 種類②絞り染め
二つ目の技法は、絞り染めです。
布をたたんで糸できつく縛ったり、板で挟み込んだりして「染めたくないところ」を作り、それ以外のところに染料を染みこませることによって模様を作り上げていく技法です。
いかに染めない部分を美しく仕上げるか、という工夫が続けられてきました。
絵画性の強い手描き友禅とは違い、図案的・幾何学的でありながら、布を染料に浸すということによる偶然性を伴う技法であるため、全ての模様が似ているようでいて少しずつ違う、唯一無二の魅力があります。
また、染めた後に糸を解いてできるシワも絞りの特徴で、ふっくらとした質感の虜になる人も少なくありません。
場合によっては防染の準備に数年単位でかかるものもあるそうです。
染めの着物 種類③型染め
最後に三つ目、型染めです。
型染めは、まず「型紙」を用意します。手すき和紙に柿渋を塗って貼り重ねて水に強くしたものを、彫刻刀のような小刀でくりぬいて透かし模様を入れたものです。
型紙の大きさに決まりはありませんが、数十センチ程度のものが多いようです。これで着物ならおよそ12メートルの布を染めていくのです。
型紙を布の上に置き、その上から防染糊をつけていきます。ついたら型紙をそっとはがし、模様が繰り返しになるように置き直し、また糊をつける…。この作業を繰り返していきます。
糊が乾いたら染めていき、最後に糊を落として完成です。
このような型染めの手法で作られる代表的な染物としては、江戸小紋や伊勢型染、沖縄紅型などが挙げられます。
型染めは、型紙を作ることで表現される独特の切り絵のような雰囲気が魅力です。
染めの着物と帯合わせも楽しんで
いくつかの技法をご紹介してきましたが、どの技法にも職人さん達の高い技術と熱心な研究があり、知れば知るほど、その一枚に愛着が湧いてきますね。
染めの着物は柔らかい質感のものが多く、優しくたおやかな着姿になるのが特徴です。しっかりとした織帯を合わせて格調高く装うこともできますし、さらっとした染帯でさりげないお洒落を楽しむのも素敵です。
いろいろな組み合わせで、一枚で何通りにも楽しんでみてください。
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