着物が普段着だった時代は、ほとんどの家庭では自宅でお手入れやお直しをしながら、一枚の着物を長く着る工夫をしてきました。現代では悉皆屋(しっかいや)さんや呉服店などでもお手入れやお直しをお願いできるようになりました。以前までは、洗い張りや染み抜き、紋入れ、仕立てなどを全て行なうお店が多かったのですが、徐々にその数も少なくなってきています。
今回はそんな現代でも変わらず、洗い張りや染み抜き、仕立て直しなど着物のお手入れに関することを全てお任せすることが出来る神奈川平塚の呉服屋だるまや京染本店にて実際の洗い張りの様子を取材させて頂きましたのでご紹介させて頂きます。
目次
洗い張りとは|着物のお手入れ
きものを解いて反物の状態に戻して洗い、布のりを引き、湯のしや伸子張りで反物の幅を整えることを洗い張りといいます。
水洗いして汚れとのりを落とし、新たに布のりを引くことで風合いを取り戻し、生地を蘇らせることができます。
仕上がりは反物の状態のため、きものにするためには仕立てを行う必要があります。
洗い張りをすることで反物の筋が消えるため、仕立て直すことができます。また、仕立て直す際に、寸法を変えたり、古くなった裏地を変えたり、八掛の色を変えてきものの雰囲気を変えたりすることもできます。出典:だるまや京染本店
洗い張りの手順|着物のお手入れ
1、解く
きものの縫い目をすべて解きます。
縫い糸を残さず取らなければならず、時間のかかる作業です。
2、端縫い
解いたきものを縫い合わせ、反物の状態に戻します。
当店では、専用のミシンを使って端縫いを行っています。
3、洗う
端縫いをして反物に戻ったきものを専用の洗剤とたわしで洗います。
反物によってお湯の温度や力加減を調整しながら、汚れを落とします。
4、乾かす
洗った反物を脱水し、外に干して乾かします。
5、つなぎ直す
洗った反物を仕事場の幅に合わせてつなぎ直します。
この時に、洗ってほつれた部分は端縫いをし直します。
6、伸子張り
紬系の反物は、竹の先に針の付いた伸子を反物に張り、しなりを利用してしわを伸ばします。
2cm間隔で張っていくため、反物1反でおよそ600本の伸子を張ります。
7、のり入れ
伸子張りした反物に、刷毛で天然の布のりを引きます。
生地の質や季節によって布のりの濃さを調整するため、長年の経験が必要です。
8、乾かす
布のりを引いた反物を乾かします。
伸子を張った状態でゆっくり乾く過程で小じわが消えます。
9、湯のし
縮緬系の反物は、テンタという機械で蒸気を当てながら生地の幅を整えます。
10、仕上げ
仕上がった反物を板で巻いて平だたみにし、糸で綴じて洗い張り終了です。